夏…?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


     〜どっかからの続き。若しくは 3
(笑)



 七月に入ってからこっち、途轍もない猛暑が当然顔で続いたものだから。朝の時計代わりに観ているワイドショーなぞで、“今日は立秋ですねぇ”なんて爽やかに言われると、え?とついつい画面を二度見してしまう。そっか、立秋ってお盆より早いんだと。日頃はさほど暦になんて関心がないクチまでが、感慨深げに聞き入ってしまうのは。早く涼しい秋になってほしい、朝晩だけでも涼しい風が立って蒸し暑さが拭われてほしいと、切に望んでいるからに他ならず。

 「まあ確かに、うんざりするレベルの暑さですしねぇ。」
 「それが連日と来ては、体を壊しかねませんものねぇ。」
 「………。(頷、頷)」

 これほどずっとずっとともなると、まだ八月か、先は長いなって思いこそすれ、立秋が来たらとか、お盆が過ぎたらっていう目安も、忘れがちになるってもんですよね…と。忘れるも何も、そんな昔の暦なんて、俳句でもお詠みの趣味でもない限り、実生活にまで持ち出したりなんかしないだろう。そりゃあ瑞々しくも若々しい、可憐なお花のような十代のお嬢様がたが口になさるものだから。

 「さすが、良家のご令嬢ともなると、
  そういう暦がらみのご挨拶とかもあるんだろうなぁ。」

 「そりゃあお前、
  日常生活からして色々とレベルが違うお人たちだもの。」

 お付き合いの幅も広いもんで。こいのぼりじゃお雛様じゃってな節句のお祝いも、それで蔵1軒埋まるほどもあちこちの名士から贈られておいでだって話だし、と。お庭のとあるセッティングを請け負った顔なじみの業者の方が、新人の相棒の小声での感嘆へ もっともらしい蘊蓄(?)を返してから。母屋へ接した中庭のなかば、青々とした藤枝が天蓋をおおうポーチ様式の木陰で涼んでいたらしい彼女らよりも、距離として手前にいた大人の方々へと顔を向け、手慣れた作業の終了を丁寧にお伝えする彼らであり。

 「設置の方、完了しました。」

 中くらいの酒樽を思わせる大きさと形の、プロパンガスのボンベを脇へと従えさせる格好で。使い勝手を一時的に変えるよう、彼らが依頼されたのは。年季の入った耐火レンガを積まれた、本格的なバーベキュー用のカマドだったりし。こちら、三木さんチの庭先には、ガーデンパーティーなんぞを催すときに使う設備が色々とあり、中でもこのカマドは結構活躍しておいでだとか。バーベキューやスペアリブとかジュウジュウ焼いたり、鋳物鍋のダッチオーブンを掛けたりする、本格的な代物だが、本来は炭を仕込んで使うそれなのへ、今日はプロパンガスのコンロを仕込み直していただいていて、

 「これなら、当日の鉄板と同じ仕様になりますね。」

 完了しましたのお声に弾かれ、コック長や執事さん、メイド頭のご婦人などなどが。点火・消化や火加減の調整等という取り扱いへの説明を受けている傍らまで、軽やかに歩みを運んだお嬢様がた。仕様変更を依頼したのも、彼女らこそが使いやすいようにとの話であって、言い出しっぺは当家の令嬢、紅ばら様こと久蔵さん。

 『リハーサルをしよう。』

 日頃通っておいでの女学園のあるご町内で、結構有名な花火見物を見越した、夜店の市が立つというので。それへ参戦する“八百萬屋”の出店屋台を、頑張ってお手伝いする気 満々の彼女らだったのだが、

 『広場の一角に休憩所っぽい場を設けはするそうですが、
  縁日の夜店よろしくで、
  イートインにあるような
  椅子にテーブルという付属スペースは作らないそうなので。』

 そうなると、お運びさんは無しの方向、お客さんと出来上がりや代金を受け渡しする手も そうそう要らぬ。五郎兵衛さんの作るものは何でも例外なく評判がいいから、屋台とはいえ 混み合うかも知れないが、それならそれで、商品そのものを作る手が増えた方が
余裕も生まれて好ましいかもと。彼女は最初からそっちへ参加するつもりだったらしい、お料理上手な ひなげしさんこと平八が言い出して。しかもしかも、知り合いに上手にこなせるコツを教わったらしい紅ばらさんまでもが、タコ焼きは任せろなんて言い出したもんだから、

 『え〜? お二人とも作り手へ回られるのですか?』

 彼女もまた手先が器用じゃああれど、どちらかといや…裁縫や編み物、フラワーアレンジなんてのの方がお得意というクチの、白百合さんこと草野さんチの七郎次が、たちまち“ずるい〜〜”という不平を鳴らしてしまわれた。

 『何 言ってますか。』

 お愛想担当が一人もいなくなっては困ります。接客接待への慣れというか、機転も度胸も余裕も必要ですからね。となると、日頃大人の集まりへおいでで そういうのがお上手で、なおかつ万人受けする美人のシチさんが担当なさるのが打ってつけ。鬼に金棒ってもんですよと、平八がすらすらすらっと言ってのけ、

 『武道部の文化祭での青空カフェへの、
  予行演習だとすりゃあいいでしょに。』

 『……♪(頷)』

 気さくなところは前世からも変わらない。人あしらいが上手で、お年寄りからお子様まで怖いものなしと来て。頼もしいくらいだと言いたいか、久蔵殿もまた、彼女らにだけ通じる“にっこにこ”笑顔で頷首したほどだったものの。

 『でもねぇ……。』

 当のご本人はといや、そんなことより引っ掛かるものがおありだったようで。料理の腕前がこちらの二人に比べるとやや劣るのは、実体験の差だ、仕方のないことだと、そこは納得もしているが。当日の段取りや何やというお話を、日頃からどころか前世からの持ち込みで好いたらしいとしておいでの、壮年警部補殿こと勘兵衛様や征樹様へも話してある。何と言っても警察関係者だ。時間帯に関係なくの始終お忙しい方々だし、宵になってからでは尚更に、犯罪への通報も増えてのこと、その身がそうそう自由になるとも思えないものの。もしかして…万が一にも、手は空いたからと立ち寄ってくださるかも知れぬ その折に、

 “アタシだけ、
  お料理出来ませ〜んと笑ってるだけってのもねぇ。”

 それで澄ましていられるほどに スレてしまっちゃあ“ヲトメ”とは言えない。マドレーヌやモンブランも作った、お料理だって少しずつながら ただ今鋭意修行中だってのは、勘兵衛様だって御存知だ。新しいメニューがこなせるようになったとご披露すると、そりゃあ眩しそうに微笑って褒めてくださるが。

  せっかくの夏の宵、
  せっかくの花火見物というシチュエーション。

 クリスマスやバレンタインデーほどのムードはないかもだが、夏の宵ならではな 愛らしい浴衣姿をご披露出来るし、晩という時間帯なのに、健康的な逢瀬として振る舞える、夏独特のシーンでもあって。

  頑張れ頑張れ アタシっ、と

 胸のうちにて ぐうを握っていたのも束の間のこと。手際のいいお料理という、女性らしい姿を、ただ一人発揮出来ないなんて…と、撫で肩を落としていたらしく。

 “女性らしい…”

 “鋭いお顔で千枚通しを駆使するのは、
  どっちかというと凛々しくも勇ましい姿では?”

 うらやまれている側の二人がついつい、微妙なお顔でこそこそと囁き合ってしまったが。まま、恋する少女の心ほど、色々と理不尽でファンタジーなのはお約束だし。(何ですか そりゃ) 前世も含めてのいつもいつも、その気遣いから救われたり守られたお友達二人としては、

  そんな白百合さんの物思い、
  お助けしなくてどうしますか、と。

 こちらはこちらで、お互いの可愛らしい拳をぐうにし、こづき合うことで意を通じさせての曰く、

 『当日の人出にもよりますが、
  連綿と調理し続けになるのはさすがにキツいですからね。』

 ゴロさんは慣れてるから任せよとのことでしたので、私たち三人は、接客と調理担当とを交替制にしてあたった方がいい。なので、シチさんにも頑張ってコツを身につけてもらいましょうと。急遽、鉄板調理の教習会を催すことと相成った。

 「勿論、私たちも本番前の練習をしておかなければ。」
 「……。(頷)」

 何せ“売り物”を作るのだからして、同じ高品質の品を しかもコンスタンツに作りゃなならぬ。

 『あ〜あ〜、歪んでしもたやないの。
  こっちの焦げてもたんは お母ちゃんが食べるよってな。
  ほれ、あんたらはお母ちゃんが焼いたん食べや。』

 『いやぁ堪忍え、お母ちゃん。』

 『ウチは上手に焼けたもん。
  せやからお母ちゃん、こっち食べて。』

 『ええねん、ええねん。
  お母ちゃんも自分が焼いたんを、あんたらに食べてほしねん。
  冷めてまうから早う食べや。』

 なんていうような、涙ぐましいお話で済みはしないのだお客さん。(涙ぐましいかどうかはさておいて、関西ではよくある話でございます・笑)

 というわけで、

 本日の練習は3人がかりでこなすこととなり。当日は浴衣姿になるものか、それも考慮する材料になるだろう手際を見るべくの、今日のところは普段着姿。Tシャツだのカットソーだのというラフないで立ちに、デニンズやチノパン、クロップドパンツを合わせ。シンプルな一枚布型ながら、胸元から膝までというエプロンを巻いてという、動きやすい格好で、レンガのカマド前へと集まったお歴々。脇へとこちらも石積みの台があり、食材から器具から、必要なものがずらりと揃っておいで。ウチワのような大コテや、少し長い目の千枚通しに、ソースやマヨネーズを入れてあり、線を描けるようになっているのか細口のボトルなどなど…と。

 「生地の調合は、
  ゴロさんにレシピを書いてもらったの、
  こちらのシェフの西丸さんに合わせてもらいました。」

 こっちがお好み焼きでこっちがタコ焼き、と。お試し焼きとはいえ、大きな鉄板に慣れるための練習なのでと、小ぶりのバケツになみなみ満たされたのが運ばれたのは、業務用には慣れのない、草野さんと三木さんチのお嬢様たちには、さすがに新鮮だったようで。

 「うわぁ、大胆不敵ですねぇ。」
 「何ですか、その喩えって。」
 「だって何かダイナミックというか。」
 「ちなみに、もーりんさんところでは、
  仕事柄 ベビーバスサイズの両手ナベで調理してたお母様なんで、
  ご両親が退職してからも
  時々、4人で何日かけて食べるんだレベルの量の、
  おでんやカレーに襲われることがあったらしい。」

 実話です、プロの習慣って怖い。(苦笑) それはともかく、カマドへ据えられた鉄板は、平たいのとタコ焼き用のが、広さにして2:1の割合か。五郎兵衛さんがどこかで都合をつけて借りて来たのだそうで。使い込まれているがための丸い焼き跡が残っていて、そこが何とも玄人風。

 「じゃあまずは、私がお好み焼きを。」

 熱くなったところを見計らい、小鉢に取り分けた刻みキャベツと生地を、パフェ用の長いスプーンで空気を入れつつの撹拌してから、素早い手際で鉄板へと置いてゆく平八で。じゅっという小気味のいい音と、芳ばしい香りが立って、ああ何かワクワクしますね、ウンウンと、早速にもはしゃぎかかったオーディエンスに釣られることなく、

 「……。」

 落ち着き払って鉄板の音を聞き、生地の乾き具合を見澄ましながら、空いた所へ豚バラ肉を並べ、

 「よしっ。」

 頃はよしということか。大きめのコテを両手に構えたひなげしさん。その先を焼いてた生地の下へ左右から すいと滑り込ませ。危なげなくの“えい”と軽やかに引っ繰り返すと、焼いていたバラ肉の上へ難無く着地させる見事さよ。

 「凄い凄い、ヘイさん手慣れてるぅ。」
 「……っ。///////(頷、頷)」

 わーっと拍手が上がったものの、

 「あのですねぇ…。」

 当日はこれを流れ作業でやるんですよと。いつもなら彼女らもまた、それを見て呆れてしまう側に立ってしまうような。いかにもお嬢様という反応を示した七郎次と久蔵だったのへ。少々伏し目がちになって、目元を座らせてしまった平八だったりする。(おお怖い・笑) 生地も表面がいい焼き加減で、中はふわふわと、上出来のが仕上がっており、

 「そうですね、当日はイカとエビのミックスも焼きますか。」
 「あ、アタシ、イカ好きvv」
 「島田のフォルム…。」
 「やっ、何言ってますか、久蔵殿ったら〜〜vv///////」

 猛烈に照れる前に、好いたらしいお人への“イカ扱い”へは怒らないのか、白百合さんてば。(笑) 怒ったのと同じかも知れぬ、含羞みからとはいえ、右へ傾くほども七郎次から ぱふぱふぱふと叩かれてしまった紅ばらさん。加減が却ってくすぐったかったようであり、しょうがないなぁと苦笑交じりに立ち上がる。

 「……。」
 「お、久蔵殿もやりますか。」

 Tシャツを腕まくりし、ふわふかな金の綿毛にはバンダナをしめて。まるでどこぞの三刀流の剣豪が、本気の戦闘態勢に入ったかの如くという身構えをすると。(笑) こちらも十分温まった鉄板の前へ立ち、とろみの緩い方の生地をヒシャクに掬う。そのまま、最小限の手つきにて、幾つもあるへこみの中へ次々に満たしてゆく素早さよ。縁が焼けて来て固まってゆく速度を見極めながら、刻まれたゆで蛸、刻みネギ、ベニショウガに天かすを満遍なく投入し。

 さあ、いよいよの見せ場の到来。

 縁からあふれていた生地を凹み同士の間で切り離すべく、格子状に切れ目の筋を入れてから、その凹みの縁へと千枚通しの先を入れ、焼かれた外を先に引っかけ、軽く回しつつ持ち上げて、えいやと引っ繰り返すのだけれども。

 「おや、まだ隙間がありますよ。」

 バレエの振り付けにあったようなと思わせるほど、そりゃあ優雅な所作にて。くるくるくると、きれいに返してゆく久蔵殿だったが。半球が凹みへ完全にはかぶさり切ってない返し方なのへ、あれれぇ?と平八が声をかければ、

 「〜〜〜。」
 「これでいいのですか? 久蔵殿。」

 かぶりを振った久蔵、一通りをその返しで浮かしてから、戻りの返しでやっとのこと、真ん丸な頬が見える格好へ返し切ったのだが。

 「こうした方が真ん丸。」
 「おや。」

 タコ焼きの生地は、お好み焼きのより緩いので。まずはの段階で180度返してしまうと、後から焼いてるほうの半分は、蓋になった側の重みにつぶされてしまい、綺麗な真ん丸にならない。玄人さんならともかくも、素人はこうやって 焦らず形を整えたほうが綺麗に仕上がるのだそうで。くるんくるんと返しつつ、そろそろ仕上げかなという段階で、うっすら油を鉄板に足して、かりかりに炙るのも手だとかで。仕上がったものから順々に、皿へと掬い上げてく手際も手早く、五十個ほどを一気に焼き上げれば、

 「あちあち、あ、でも美味しいvv」
 「……vv(頷、頷)」
 「生地の風味も最高ですが、
  カリッという下に柔らかいのが控えてる緩急がいいですよね。」
 「そこは焼いたお人のお手柄ですよねvv」

 一応はパラソル立てて日陰を設けはしたものの、今日も結構な暑い日だというに。お嬢さんがたはといや、熱い熱い鉄板を取り囲み、そりゃあお元気にもお喋りが止まらぬご様子で。とはいえ、冷たいものもどうぞと、露をまとったグラスの中、クラッシュアイスと共にそそがれた冷たいレモンスカッシュを家令頭の奥方から運んでいただくと、素直に歓声を上げた彼女らでもあり。

 「そういや、くうちゃんを見かけませんが。」

 こちらのお宅へ遊びにくると、久蔵のすぐ傍らにいて離れない、そりゃあ甘えたのメインクーンさんが、ほぼ必ず 視野に収まるはずなのだが。今日はまだ姿を見ませんねぇと、平八が小首を傾げもって周囲を見回せば。

 「…暑いので出て来れぬ。」
 「あらまあ。」

 何たって長毛種ですものね。いやいや、あやつは勘がいいのだ。というと? こんな熱いものを取り囲む集いには加われませんということさねと。久蔵殿の側からも、彼女の心理が読めるようなお言いよう。

 “さすがは…。”
 “動物をあまねく支配しちゃえる“女王様”ですものね。”

 こらこら、褒めてるように聞こえませんがと。筆者がついつい苦笑しつつも、おいおいと窘めかかった手を掻いくぐり、

 「…………あれ?」

 不意に何かに気づいたらしいのが、白百合さんで。今朝方から妙に喉の奥がざりさりしていた。こんな暑いのに風邪かしらイヤだなぁと、覚えのない不快感へ眉を寄せちゃあ鎖骨の下あたりへついつい白い手を伏せては気にしていたものが、ほんのついさっき、すうっと爽やかに立ち去ってしまったのだけれども。その折にかすかに聞こえたのと同じ音がしたような。

 「シチ?」

 タコ焼きの皿を片手に辺りを見回しつつという、ちょっぴりお行儀の悪い格好のまま。スツールから立ち上がると、音の気配のした方を見やり。

 「……。」

 その先へ、何かしらを見つけたらしくて。皿はさすがにテーブルへ置いてのこと、ミュールの足元も軽快に、芝草をさくさくと踏みながら、近づいてったのがサツキの茂み。すぐ奥のハナミズキの足元隠しのような案配で、重なるように植えられてあるのだが。その傍らまでを迷いない足取りで進んでった彼女であり。

 「どしました?」

 訝しげに声をかけた久蔵とそれから、平八も一緒に立ち上がり、その後を追ったところが、

 「あらまあ。久蔵殿、くうちゃんが若返っておりますよ?」

 くすすと何かへ楽しそうな声音になってのこと、ひょいとしゃがんでしまった七郎次が、その手を茂みへ延ばして見せて。さして手間も掛けないまんま、がさがさと引っ張り出して見せたのは、

 「みぃ。」
 「ありゃ、これは。」
 「………☆」

 さして大きくはない女子高生の手にも収まるという小ささの。キャラメル色の綿飴か、若しくは毛玉のような毛並みも愛くるしい、小さな小さなメインクーンの赤ちゃん猫が。まるでそこから生まれたの、七郎次が取り上げたかのように…というのも何ではあるけど。そうと思えたほどのお見事に、ひょいっと引っ張り出してしまわれて。

 「迷子ですかね。」
 「そうみたいですよ、首輪してますし。」

 こ〜んな広いお庭に紛れ込むとは、やんちゃな腕白さんですねぇと。七郎次がほお擦りをして見せれば、

 「…にぃみぃ。」
 「あれれ、別なお声もして来ます。」
 「あ…。」

 お友達を返してと言いたいか、もっと小さい黒猫さんも同じ茂みから出て来たから不思議。

 “外壁は結構高いから。”

 こんな幼い猫がよじ登るのは、容易なことじゃあないはずだがと。今度は当家のお嬢様が、小首を傾げてしまっており。黒猫のほうは平八が抱えて“いい子いい子”とじゃらしていたが、

 「そうだ、お腹は空いてませんか?」
 「あ、シチさんたらこの子たちに大盤振る舞い?」
 「猫にタコやイカは…。」
 「そうでしたわね。
  じゃあ今度はアタシが焼きそばを焼きましょうvv」

 さあいよいよの修行開始ですわよと、テーブルに移動させてあった大コテを手にした白百合さんだったのへ、

 「シチさん、慣れるまでは菜箸だぞ。」
 「……は〜い。」

 頑張れ、お嬢さんたち。不思議な食いしん坊たちも、応援しているにゃんvv





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 *このままお料理番組になるところでしたが、(笑)
  やっとのこと、直前のお話からの引きが繋がりましたな。
  (ここから読んでいる方は、
   
こちらへ戻ってくださると事情も通じます。)

  先程の除菌、もとえ除霊で多少は精気を使ったか、
  お腹が減ったらしい誰か様。
  標的が無事かの確認がてら、
  えらいところへ顔をお出しです。(笑)
  島田さんチの次男坊と違い、
  紅ばらさんにも ちゃんと仔猫に見えてるようですよ?


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